あらすじ

税務調査の連絡が来た日、税理士・榊原真守のもとへ、百年前の自分の罪が宅配便で届いた。 大正十四年、真守の前世は陸軍二等主計・榊原征一。納品されていない羅紗二百四十反を「水害で滅失」とする虚偽の帳簿に、上官の命令で印を押した男である。悔いて帳簿を守ろうと火の中へ入り、何一つ救えずに死んだ。次に目を開けた先は、大戦を回避したもう一つの現代日本。教科書の中の榊原征一は、英雄になっていた。 今回の顧問先は、水害で証憑を失った創業百年の町工場。四千百万円を超える外注費が疑われ、全面否認されれば融資も四十六人の雇用も危うい。三十七社に照会し、四百件の取引を一件ずつ繋ぎ直す。三百九十九件は本物だった。だが、水害を免れた唯一の請求書だけが、偽物だった。 百年前の嘘は「水害で失われた」ことにされ、百年後の嘘は「水害を免れた」ことにされていた。 一枚の嘘を隠せば、三百九十九枚の真実まで疑われる。 前世で虚偽に印を押した男が、二度目の人生で事実にのみ署名する、転生税務ヒューマンドラマ。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/09/03
  • 現在の作品百年目の修正申告 ~大正の陸軍二等主計だった私は、大戦を回避した並行現代で税理士になる~