あらすじ
写字室で装丁の下拵えをするツヴェタは、羊皮紙を五枚ずつ声に出して数えなければ気が済まない。その癖を「納期が延びるだけだ」と笑う伯爵令息イオルワースは、なぜか糸や革の好みまで尋ねては、三度も仕事を持ち込んでくる。
三度目の依頼は、夜明けに迫った妹アウステーヤの婚礼帖。急かされながら数えても、三十四葉しかない。けれど束の厚みは三十五葉ぶんある。
工賃も信用も捨てる覚悟で湿った羊皮紙を剥がすと、そこには花嫁の消された意思があった。
無駄だと笑われた葉数えが望まぬ婚礼を止め、注文だと思っていた言葉の意味まで数え直す、融通の利かない装丁女工と注文の多い伯爵令息の、少しもどかしいお仕事恋愛のお話。