あらすじ
「死者の声には、たいてい管がつながっている」
前世で十九年間、霊感商法の被害相談に携わった男は、祈りや呪術が現実に作用する異世界へ転生し、国庫補助の対象となる奇跡を調べる〈奇跡監査官〉レオルとなった。
今回の監査先は、思い出一つと引き換えに、死者と一分だけ話せるという〈追憶聖堂〉。鏡の死者は役者、声は椅子に仕込んだ伝声管、秘密は告解から盗んだもの。いつもどおり「否認」で終わるはずだった。
だが、外したはずの管から、この世界には存在しない言葉が聞こえる。
『お父さん。また、お仕事なの?』
前世に残してきた娘の声だった。
さらに、一冊の本を抱えた少女が告げる。
「ここは死者と話す場所じゃない。生きている人を、いなかったことにする場所だよ」
偽物の奇跡の底で、本物の怪異が人々の記憶を食べている。
人を救う物語と、人から選ぶ権利を奪う嘘は、何が違うのか。
死者の声を信じない監査官が、忘却の聖堂に最後の判定を下す異世界呪術ミステリー。