あらすじ

「聖女の祈りなど、飾りだ。妹でもできる」 婚約者の王太子ギスランは、私の妹ソランジュの肩を抱いてそう言った。真実の愛だそうだ。 私はオデット、二十八歳。暁の聖女を十年務めている。千年前の女神の約束で、王都の朝は、聖女が夜明け前に王の名を唱えてはじめて昇る。大陸に王は七人。唱えた順に、七つの王都へ朝が来る。千年、この国の王都が一番だった。祈れば昇る。だから飾りに見える。 「では、明日の朝は隣国で祈ります」 王都は国境の川に面し、対岸には北の国ノルディアの王都がある。千年、朝がいちばん最後に届いた都だ。私は夜のうちに橋を渡り、北の岸で、北の王レナートの名から唱えた。この国の王の名は、唱えなかった。 朝日は、川のこちら側だけに昇った。 王都は夜のままだった。民は橋を渡って朝を見に来た。二日目、妹が大聖堂で祈った。昇らなかった。三日目、王が徒歩で橋を渡ってきた。 「余の名を、唱えてくれぬか?」 「朝は、隣の国から差し上げます。この国は、七番目に」 朝の来る順番が、大陸の地図の上で書き換わるまでの、三日の話。

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カクヨム
カクヨム2026/09/03
  • 現在の作品「聖女の祈りなど、飾りだ」と婚約破棄されたので、明日の朝は隣国で祈ります ~王都だけ、夜が明けなくなりました~