あらすじ

――失われた楽園で、私たちは愛を名づけられなかった。 夫に捨てられ、子を失ったルシアは、王家から第二王子シルヴァの乳母を命じられる。 彼女が送られたのは、王宮の片隅に忘れ去られた離宮――「紅の離宮」。 そこにいたのは、誰からも顧みられない、小さな王子だった。 言葉も持たない幼い手が、ルシアの指を握る。 やがて二人は、薔薇の咲く庭で季節を重ね、歌と笛の旋律を分かち合い、互いの孤独を埋めていく。 「ずっとここにいてね」 その約束が、いつしか二人にとって世界のすべてになっていた。 けれど、シルヴァが成長し、王としての道を歩み始めたとき――二人の楽園は、少しずつその姿を変えていく。 母でもない。 乳母でもない。 妻でもない。 それでも、離れることのできない二人。 これは、世界からこぼれ落ちた女と、世界から見捨てられた王子が、忘れ去られた離宮で見つけた――ほんのひとときの楽園の物語。 そして私は、今も知らない。 あれを、愛と呼んでよかったのかを。

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カクヨム
カクヨム2026/09/03
  • 現在の作品紅の離宮  ~愛とは何か、求め合った二人の失われた楽園の追憶~