あらすじ
伯爵令嬢エステルの婚約者は、「氷壁公爵」と呼ばれるアルベルト。
婚礼を控えているというのに、彼はエステルの新しい髪飾りを見ても「問題ない」としか言わない。
やはり、この婚約は彼にとって政略でしかない。
そう思っていた満月の夜、月精霊の加護で猫になってしまったエステルは、偶然アルベルトの書斎へ迷い込む。
すると、普段は冷酷な彼が猫を膝へ乗せ、信じられないほど優しい声で話し始めた。
「今日の髪飾りは、よく似合っていた」
「私は彼女と結婚したい。政略ではなく、彼女自身に選んでほしい」
どうやらアルベルトは、人間には言えない婚約者への恋心を、猫にだけ打ち明けるらしい。
本当は愛されていたことがうれしい。
けれど、その猫が本人だとは絶対に言えない。
エステルは翌朝から、何も知らないアルベルトと以前のように接することができなくなる。
そして三度目の満月の夜。
アルベルトの腕の中で、猫の姿が解け始めてしまい――。
猫にしか本音を話せない冷酷公爵と、その本音を聞いてしまった婚約者が、秘密を手放して自分の言葉で恋を選び直す物語。