あらすじ
刑事・刑部真一は、世間では自殺として処理された複数の怪死に、ある奇妙な共通点を見つける。
死者たちは皆、死の直前に“次の死者”へ言葉を残していた。
「忘れていい」
「赤い自転車」
「六月十四日」
「三人だった」
「二階の窓」
それらは何気ない言葉に見えながら、それぞれの人間が胸の奥に隠してきた罪や後悔を正確に抉り出していた。
誰かが被害者の過去を調べ、言葉だけで自殺へ追い込んでいるのか。
それとも、人から人へと渡り歩く“何か”が存在するのか。
捜査を進めた刑部は、かつて患者の秘密と言葉を記録していた心理療法施設、三十年前に同じ怪死を追って自ら命を絶った刑事、そして自分自身が忘れていた幼少期の事故へと辿り着く。
だが、証拠を集めれば集めるほど、事件の輪郭は曖昧になっていく。
被害者たちを結びつけたのは、本当に犯人なのか。
怪異なのか。
それとも――意味を見つけようとした刑部自身なのか。
やがて最後の死者が刑部に残した、一つの問い。
「まだ覚えてる?」
その言葉によって、追う者だった刑部自身が事件の内側へと引きずり込まれていく。
言葉は、人を殺せるのか。
記憶は、どこまで真実なのか。
偶然に意味を与えた瞬間、それはもう偶然ではなくなるのか。
心理ミステリー、純粋な犯罪ミステリー、オカルト、そしてホラー。
読む者がどの証拠を信じるかによって、最後の真相そのものが姿を変える。
犯人を探していたはずの刑事が、最後に見つけるものは何なのか。
そして、物語を読み終えたあなたの中に残る“声”は、本当にただの残響なのか。
言葉と記憶が連鎖する、解釈型ミステリー。