あらすじ
高校入学を控えた春休み、八重歯を気にする主人公・美咲は、「将来の歯を守るため」という親の勧めで矯正治療を始める。しかし、選んだのは専門医ではなく一般歯科のクリニックであり、狭いあごに無理な非抜歯で歯を並べた結果、出っ歯化と激しい歯根吸収を引き起こしてしまう。
21歳、就活を迎える頃には8年もの長期化に耐えたものの、金具を外した前歯はすでにボロボロだった。さらに23歳で前歯4本を抜歯せざるを得なくなり、インプラントも適応外と告げられた美咲は、恐怖と見栄から「ロングスパンブリッジ」を強行する。だが過重負担によって26歳で土台の犬歯が破折し、前歯6本をすべて失って大型ノンクラスプデンチャー(部分入れ歯)へと移行する。
その後も崩壊のドミノは止まらず、28〜30歳で小臼歯を失い、31〜32歳には残った奥歯も全滅。ついに32歳で上あごの天然歯が完全にゼロになり、「上顎総入れ歯」を宣告される。
若くしてすべての歯とあごの骨を失い、毎朝の安定剤や個室トイレでの洗浄、食事や会話の制限といった終わらない代償を抱えながらも、35歳の美咲は過去の選択を受け入れ、不完全な身体とともに強く前を向いて生きる決意を固める。