あらすじ
十八歳の神官長キースは、「世界一の魔導士」と呼ばれていた。
だが彼は、神殿の外をほとんど知らない。
三百年間届かない神託を隠し続ける国で、本を読み、魔導を学び、自分に与えられた権力へ疑問を抱きながら生きてきた。
そんな彼の前に、白い髪と深紅の瞳を持つ精霊ローゼンが現れる。
彼女が告げたのは、世界各地で〈混沌〉と呼ばれる異常が拡大し、大地そのものが消え始めているという事実だった。
最大の異常地点は《アムドアの大穴》。
しかし調査を進めるうち、キースたちは奇妙な記録を発見する。
アムドアは魔導事故によって消えた都市だった。
アムドアは、太古から存在する穴を監視するために築かれた都市だった。
そして――そもそもアムドアなど存在しなかった。
矛盾する三つの歴史。
存在したはずなのに、始まりだけが存在しない者。
自分ではない誰かの記憶。
そして古代の記録に残された、途中で途切れた言葉。
《ラグナ――》
世界を救う旅はやがて、
「世界とは何か」
「過去とは何か」
そして「自分は何者なのか」を巡る物語へ変わっていく。
過去を受け継ぐことと、過去に支配されることは違う。
これは、記録された歴史すら信じることのできない世界で、
それでも自分自身として生きることを選ぶ者たちの物語。
――この物語は、真世界が生まれる以前の物語である。