あらすじ

「妹が来るまでの繋ぎだ。名だけの妻でいい」 王命の期日に辺境伯家の門をくぐったのは、証文の花嫁ではなく、その姉だった。妹は、王都の社交期が終わるまで来ない。伯爵家の家政を十年回してきたルシエンヌ、二十七歳は、頭を下げた。 「承知しました。繋ぎでしたら、切れ目なく務めます」 繋ぎの務めとは、切れ目を繋ぐことである。 翌朝から、屋敷の切れ目を一つずつ繋いだ。三月滞った給金を払い、止まっていた薪の道を開き、閉じていた陳情の戸を開け、冷えた食卓に火を入れる。兵の鍋で済ませていた夫は、初めて食卓に来て、初めておかわりを言った。 初雪の夜。帳を付ける手元に、夫が薪を一本足す。 「繋ぎに、これは含まれるか?」 「含みます。切れ目ですから」 そして、妹が着いた日―― 「お姉様、繋ぎをありがとう。離れは、用意してくださったのでしょう?」 「はい。薪が三月分、乾いております」 使用人は妹を客として迎え、領民は妹を知らず、食卓に、妹の席は無かった。 名だけの妻、と言った夫が、妻の名を自分の手で書くまでの三十日。

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小説を読もう2026/09/03
  • 現在の作品「妹が来るまでの繋ぎだ」と言われた身代わり花嫁ですので、繋ぎの務めを切れ目なく果たしました――妹が着いた日、屋敷に妹の席はありませんでした