あらすじ
人の心が、聞こえる。
蓮見透にとって、それは呪いに近かった。
容姿に向けられる欲望も、成績への嫉妬も、望まないのに全部聞こえてしまう。
だから相手が望む言葉を先回りして渡し、誰からも好かれる「蓮見透」を演じてきた。
二年生になっても、その毎日が変わることはない――はずだった。
進級して、席替えで隣になった氷室誠。
彼は、透が初めて出会った「読めない」人間だった。
悪意も、下心も、何ひとつ聞こえない。
退屈そうに欠伸をして、眠そうな目でこちらを見るだけ。
紙のやりとり、溶けかけのチロルチョコ、一冊の本。
小さなやりとりを重ねるうちに、透は気づいてしまう。
――心を読まなくても、隣にいるだけで、知れることがある。
そして、それはもう「たまたま」ではない。