あらすじ

東京のタワーマンション、その四十七階。 三十二歳の榊冬一は、白く大きな犬・雪路と暮らしている。在宅で仕事をし、朝晩は川辺を走り、自分が食べたい料理だけを作る。酒は一杯。家具は必要な分だけ。恋愛や結婚を求められる街の声から離れ、誰にも羨まれなくてよい幸福を、彼は静かに守っていた。 ところが午前三時十三分、窓の向こうに存在しない黒い塔が現れる。 差出人のない手紙、古い銀色の鍵、雨の中で出会う裸足の女。そしてある朝、冷蔵庫の奥に青い海が広がっていた。 日常へ迷い込む奇妙な出来事を、無理に解き明かそうとはしない冬一。大きすぎる海は瓶へしまい、今日も雪路のために食事を用意する。 選ばなかった人生に、ときどき心を揺らしながら。それでも自分で選んだ一日を、ひとつずつ美しく育てていく。 白い犬と孤独な男をめぐる、静かで上質な都市幻想譚。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/09/02
  • 現在の作品冷蔵庫に海をしまう