あらすじ
京都の空には、巨大な鎖がある。
けれど、それを知っている人間はほとんどいない。
現代日本の裏側では、八柱の異界神がこの世界へ繋ぎ止められ、その監視を八つの旧家――「八家」が担っている。
高校二年生の久世修真も、その一つ「久世家」の後継者だった。
ただし、修真には才能がない。
彼の棘《時雨》は扱いやすいだけの凡庸な武器。
同世代の棘使いたちと比べれば火力も射程も足りず、両親を失った久世家は、修真が結果を残せなければ取り潰されるところまで追い込まれていた。
修真が望んでいることは一つだけ。
十歳の妹・澪と暮らせる家を残すこと。
だから弱いなりに戦った。
敵の癖を読み、地形を使い、遮蔽物と距離を計算し、勝てない相手からも生き残ってきた。
――そのはずだった。
八家による共同討伐作戦。
想定を超える異界生物を前に撤退が決定されたとき、修真だけが戦場へ置き去りにされる。
弱い戦力を一人犠牲にすれば、強い戦力を生かせる。
そんな合理的な判断によって。
死を目前にして、修真は自らの棘《時雨》へ告げる。
「俺の魂をやる。だから、あいつを殺せ」
禁忌――《魂移し》。
その瞬間、凡庸だった棘は異常な力を得た。
そして修真もまた、生き残る。
代わりに彼の身体には、ひとつの飢えが残った。
異界生物の血を、
どうしようもなく、
美味そうだと思うようになった。
やがて八家は問う。
久世修真は、人間なのか。
それとも棘に魂を喰われた怪物なのか。
これは、怪物になりかけた少年が、
それでも妹を守り、
約束を守り、
人間であることを選び続ける物語。
現代日本の空に神々を縛る巨大な鎖が伸びる、
現代伝奇ダークファンタジー。