あらすじ
二〇二七年七月二十五日――諫早大水害の記憶が残る本明川で、国土交通省から諫早市へ出向中の土木職員・白瀬湊一(二十七歳)は、川に流された時代錯誤の少女を救う。
だが、水中で河童に足をつかまれ、浮かび上がった先は元和七年(一六二一年)。
見慣れた諫早の町は消え、眼前には広大な海と干潟が広がっていた。
湊一が出会ったのは、水の記憶を読む水守・澪と、潮と泥を知り尽くす河童・ガタ吉。
洪水、貧困、農民と漁民の対立――。
重機も測量機器もコンクリートもない時代では、現代の知識だけで一本の堤も築けない。
「海は、余っとる土地じゃなかぞ」
海を田に変えるだけでは、人も魚も河童も生きられない。
湊一の土木知識、澪の神通力、ガタ吉たち河童水工衆の現場技術。
三者は失敗を重ねながら、水・人・海・土地が共に生きられる国づくりへ挑んでいく。
これは、奇跡だけに頼らず、江戸初期の有明海から「百万石」を生み出そうとする、前向きな和風歴史ファンタジーである。