あらすじ
「欠陥品を塗ったのはあなたですね」親族の漆工房で飾り娘を務めるデヤナは、公爵家の若き用度役マルコから、納品室でそう名指しされた。だが彼女は泣いて潔白を訴えず、発注書に定められた「見本」と「預かり品」の意味を一つずつ確かめていく。やがて開かれた公開検品で、若旦那ステファンは責任を分けるため「皆で仕上げた品だ」と宣言する。それならば、下地、中塗り、上塗りを実際に担った者を全員記すまで。牡丹文の大皿一枚を自ら傷つけ、奪われてきた職人たちの名と仕事を明るみに出したデヤナへ、誤認を公に撤回したマルコが差し出したのは、仕事場と帰る家、二本の鍵だった。名を消された令嬢が、働き、食べ、眠り、家族になれる居場所を選ぶお話。