あらすじ
七年で、八十九回お招きした。
お越しになったのは、十一回。
あとの七十八通は、断りだった。七十八通とも、同じ一文が書いてある。
「妹の容体が思わしくなく」
病人の看病を咎めることはできない。咎めれば、こちらが薄情になる。だからヨハンナは七年、一度も口に出さなかった。婚儀が四度延期されたときも、何も言わなかった。
十四で婚約し、いま二十一になる。
八十九回目の晩餐に、コンラートは来た。七年で十一回目だった。
そして席に着くなり、こう言った。
「君は七年、一度も僕を求めなかった。冷たい人だ」
ヨハンナは家令に、綴りを持ってくるよう言った。
ヴァイセンベルク侯爵家では、社交の記録をすべて残す。招待状は写しを取り、返事は同じ綴りに挟んである。疑ったからではない。そういう家に生まれただけである。
八十九枚の控えと、七十八通の返事。七十八通は、すべて同じ手で書かれている。
コンラートは、八十九回招かれたことを知らない。屋敷に届いた紙を、彼は一度も見ていない。
――だからそのとき、彼が振り返ったのはヨハンナではなかった。