あらすじ
「それでは、故・相馬清三様のデジタル遺品開示手続きを開始します」
祖父の四十九日の法要が終わった座敷で、デジタル遺産整理士兼税理士の神保は、公用端末を開いた。
現実とは少しだけ制度の違う日本。『デジタル遺産相続適正化法』により、人が亡くなると、検索履歴も写真もメモも凍結され、相続人の前で開示される。
無口な町工場の職人だった祖父のデータは、不器用で、少し可笑しく、家族の知る姿そのものだった。
ただ一つ、最奥の暗号化フォルダを除いて。
『作業日誌_非公開』
『絶対に開けるな。消去せよ』
開かなければ、相続財産の評価を確定できない。だが、残された試行回数は三回だけ。
手掛かりは、油の染みた手帳に残された四つの日付。
死後の秘密は、誰のものになるのか。頑固な祖父のパスワードをめぐる、すこし不思議な家族SF。