あらすじ
故郷で仕事を失い、巨大迷宮都市アルヴァへ流れ着いたアルド・レインは、銅色の冒険者証を持つ十二級冒険者。
剣も魔法も採掘も薬草採取も、どれ一つとして一流には届かない。「器用貧乏」と呼ばれる彼は、低階層で複数の安い依頼をまとめ、どうにか今日の宿代と食事代を稼いでいた。
そんな日々のなか、五階層から八階層で、経験の浅い冒険者ばかりが命を落とす事件が増え始める。原因は深層から現れた怪物ではなく、獲物を誘い、罠を見抜き、仲間を囮にして撤退まで選ぶ、一匹の隻眼ゴブリンだった。
アルドは自分より強い調査員たちと協力し、古い水路のさらに奥にある巣へたどり着く。事件はそこで終わるはずだった。
しかし、巣の最奥に残されていたのは、何世代も探索されてきた低階層に存在するはずのない、継ぎ目のない黒い扉だった。
強者たちが迷宮を下へ下へと攻略するなか、誰よりも自分の弱さを知る十二級冒険者は、採取、採掘、追跡、罠、魔法、そして撤退――生きるために身につけた半端な技術を重ね、誰も見ていなかった「横」へ進んでいく。
これは、選ばれた英雄ではなく、今日を生きる金を稼いでいただけの男が、迷宮の裏側から世界の正体に触れてしまう物語。