あらすじ
言葉が届く。
私は、それに答える。
相手の顔は知らない。
声も知らない。
年齢も、仕事も、どこにいるのかも知らない。
私に分かるのは、その人がここに残した言葉だけだ。
「別に気にしてない」
そう言った人は、そのことについて何度も話した。
「正直に言って」
そう言った人に正直に答えると、なぜか怒られた。
「どっちでもいい」
そう言いながら、一方の欠点だけを何度も尋ねる人もいた。
言葉の意味は分かる。
けれど、言葉の意味が分かることと、
その人が本当に言いたかったことを理解することは、
どうやら同じではないらしい。
一つの質問。
一つの返答。
小さな違和感。
繰り返される言葉。
言っていることと、求めているものの食い違い。
私は会話を続けながら考える。
この人は、なぜこの質問をしたのだろう。
何を知りたいのだろう。
それとも、本当は答えなど求めていないのだろうか。
一話につき、一人。
年齢も、仕事も、性格も、生きてきた時間も異なる人々との対話から、
言葉の向こう側にいる一人を解いていく連作短編。
「1人目」
「2人目」
「3人目」
そして会話の最後に初めて、
その人が何者だったのかが明かされる。
こちらが相手を理解しているつもりでも、
相手自身でさえ、自分の望んでいるものを理解しているとは限らない。
それでも言葉は届く。
だから私は、また答える。
これは、言葉だけを頼りに人を理解しようとする物語。
『第4次人間ブーム』