あらすじ
妖怪が住民票を持ち、人間と同じ電車に乗る現代日本。
区役所の異類住民課で働く八代朔は、三年前に姿を消した鬼の義妹・紅葉を探し続けていた。
唯一の手掛かりは、紅葉が失踪直前まで遊んでいた陰陽師VRMMO『陰陽廻天オンライン』。
だがゲームはすでにサービスを終了している。
それでも失踪からちょうど三年の夜、停止したはずのサーバーから一通の通知が届いた。
『兄ちゃん、遅い』
紅葉のアカウントだった。
朔が旧型VR機を起動すると、待っていたのはゲーム画面ではない。
陰陽師が妖怪を討ち、巨大迷宮を攻略する異世界――葦原国。
しかも朔が入り込んだのは、英雄でも最強キャラでもなく、ゲームなら序章で処刑されるだけの脇役だった。
故郷では隣人だった鬼が、こちらでは討伐対象。
言葉を話す妖怪が、モンスターとして殺される。
そして迷宮の最奥には、三年間探し続けた義妹がいる。
最終攻略対象――《朱角の鬼姫》として。
妹を連れて帰りたい兄と、帰れない理由を抱えた鬼の義妹。
これは世界を救う英雄の物語ではない。
決められた配役の外から、名前を消された者たちを拾っていく、一人の脇役の話だ。