あらすじ
神から授けられる『ギフト』によって、人の才能も将来も大きく左右される世界。
五歳になった門番の息子アルトも、自分がどんなギフトを授かるのか楽しみにしていた。
《剣術》なら父より強くなれるかもしれない。《魔法》なら憧れの魔法使いになれるかもしれない。
しかし、神殿で告げられた結果は――
「ギフトが……ありません」
しかも魔力さえゼロ。
誰もがアルトを哀れんだ。
だが、本人は少し違った。
「ギフトがなくても、剣は振れるしな」
物心ついた頃から、父を真似て毎日欠かさず剣を振り、身体を鍛え、存在しないと言われた魔力まで探し続けるアルト。雨の日も、疲れた日も、ほんの五分でも決してやめない。
すると、なぜかギフト持ちとも互角に戦えるようになり、さらには蟻や鳥の声まで聞こえ始める。
《アルト。友達。》
ギフトではない。テイムでもない。魔力もない。
では、この力はいったい何なのか?
弱いギフトに悩む仲間たちも、そんなアルトを見て少しずつ変わり始める。
そして少年はまだ知らない。
自分の魂に、かつて別の世界で八十五年を生きた、ある男の記憶が眠っていることを。
何も与えられなかった少年が、努力と好奇心だけで自らの人生を切り開いていく。
――これは、後の世まで『ギフトなし』と呼ばれ、語り継がれた一人の男の物語である。