あらすじ
「すまない。真実の愛を見つけたんだ」
大神殿の誓い検め、ヨハンナ、三十三歳。婚姻の誓いが本物か偽物かを検分して、十一年になる。
その日、婚約者の伯爵令息が広間へ連れてきたのは、男爵令嬢だった。真実の愛だという。ならば、話は早い。
「おめでとうございます。では、その場で申請いたしましょう」
女神の則はひとつ。真実の愛を交わした二人は、七日のあいだ、互いに一度も嘘をつかない。
相手に向かって嘘をつけば、鳴る。首から下げた銀の小さな鈴が、広間じゅうに聞こえる音で。七日鳴らなければ〈女神の事由〉として違約なく解け、二人は祝福される。鳴れば、解消はそのまま立って、違約は破棄を言い出した側が負う。
――七日、もてば。
ヨハンナはその場で銀の鈴を二つ取り出し、二人の首へ掛けた。初日の昼、鈴が鳴った。
「今のは、わたしではありませんわ」と男爵令嬢が言い、その言葉でもう一度鳴った。
検め役の仕事は、毎朝、鳴った数を広間で読み上げること。
二日目、三十七回。三日目、数えるのをやめて、鳴りやまぬ鈴の音のまま読み上げた。
四日目の朝、令息はヨハンナの前に立った。
「……あの鈴を、外してくれ」
「外せるのは女神様だけです。わたしは、掛けて、数えて、読み上げるだけですから」
大神殿でいちばん静かな役人が、いちばんうるさい七日間を差配する話。