あらすじ
24歳のエンジニア・たかひこには、ささやかな夢があった。
いつか好きな女性と結婚し、子供をつくり、両親に孫の顔を見せること。
そんな未来を夢見て恋活を始めた彼は、優しく穏やかな保育士・なおみと、明るく元気なまりえという二人の女性と出会う。
二人との距離が少しずつ近づき、恋が始まろうとしていた――その時だった。
46歳の派遣社員・はなこから突然、交際を申し込まれる。
たかひこの答えは、当然のように「ごめんなさい」。
しかし、数日後。
はなこは宗教団体「清い世界」の信者たちを連れて、たかひこの前に現れる。
「一度だけ、付き合ってみませんか?」
断っても、断っても、彼らは帰らない。
そしてたかひこは、押しの弱い自分の性格ゆえに、その交際を受け入れてしまう。
最初は、ただの気の合わない恋人だった。
だが半年、1年と時間が過ぎるにつれ、たかひこは気付いていく。
――この女性とは、絶対に結婚したくない。
別れたい。
逃げたい。
普通の人生に戻りたい。
しかし、別れを告げるたびに「清い世界」の人間たちが現れる。
友人は離れ、職場まで巻き込まれ、家族との関係さえ壊れていく。
そして、ようやくたかひこが覚悟を決めた時。
はなこは静かに微笑んだ。
「大丈夫ですよ。私たちは、ずっと一緒ですから」
それは愛なのか。
執着なのか。
それとも――狂気なのか。
好きではない人と付き合っただけ。
たったそれだけの選択が、一人の青年の人生を少しずつ、確実に壊していく。
そして最後に待っているのは、誰にも救えない、最悪の結末。
「清い世界」から、逃げることはできない。