あらすじ
十六歳の夏。
羊飼いとして暮らしていたぼく、クリスは、幼馴染のライに引っ張られるまま冒険者になった。
《いのちだいじに》。
命を守ることを最優先にし、攻撃よりも回復や支援を得意とする力だ。羊飼いとして身につけた牧杖の扱いと《誘導》の技術で、ぼくは仲間を危険から遠ざけ、無事に帰すことを自分の役目にしていた。
《ガンガンいこうぜ》
向こう見ずで猪突猛進なライ。
《いろいろやろうぜ》
雑貨屋の一人息子で、何でもそつなくこなすネージュ
性格も、得意なことも、三人三様。
それでも、三人ならきっと良い冒険者になれる。
そう思っていた。
採取、討伐、薬草、魔物。
故郷の小さな街で依頼をこなし、ぼくらは少しずつ強くなっていく。危険な場面では互いに助け合い、誰も欠けずに帰ることを、ぼくは当然のように信じていた。
けれど、冒険者である以上、すべての命を救えるわけではない。
誰かを助けるためには、別の誰かを見捨てなければならないことがある。
仲間を守るために、魔物の命を奪わなければならないことがある。
そして、どれだけ慎重に選んでも、守りたい命を守れない瞬間がある。
やがて訪れる、故郷を揺るがす異変。
そのとき、ぼくは初めて突きつけられる。
《いのちだいじに》を選び続けた先で、ぼくは本当に誰かを救えていたのか。
命を守ることは、ただ危険を避けることなのか。
どんな時でもぼくは同じ言葉を掲げられるのか。
これは、羊飼いだった少年が仲間と出会い、旅をし、守れなかった命を抱えながら、それでも自分の「いのちだいじに」と向き合い続ける物語。
――《いのちだいじに》は、ぼくをどこに導くのだろう。