あらすじ
■ジャンル・主な読者価値
・現代ダンジョン×食堂×食材調達×主人公無双×迷宮ミステリー。
・料理ではなく「仕入れ」に異常な情熱を注ぎ、食材のためならA級魔物も狩る規格外の主人公
・魔物を生態、餌、季節、肉質、捕獲法から見ることで生まれる、討伐とは異なる意外な攻略
・元S級や現役S級など、価値の高い人物から主人公の異常さが次々に認められていく快感
・主人公を「旦那様」と呼んで溺愛する、可愛さと底知れなさを併せ持つ謎の魔女・セラとのラブコメ
・食堂を拠点に、探索者、権力者、未知の事件が次々と訪れるテンポのよいコメディ
・食材探究がそのまま迷宮の未知へつながっていく長期的な探索欲
■ログライン
・最高の食材を仕入れることしか頭にないA級探索者・朔崎直矢が、食べ物を口にできない謎の魔女・セラとダンジョン内に食堂を開き、魔物の生態と規格外の探索能力を駆使して未知の食材を仕入れながら、迷宮の奥に眠る秘密へ近づいていく現代ダンジョン食漫画。
■追いかけたくなるメインキャラクター
・朔崎直矢――食材を追った結果、A級探索者になっていた「仕入れ係」
20代半ばのA級探索者。短い黒髪に眠たげな目をした細身の青年。探索用ジャケットの下には厨房用の作業着、腰には使い込んだ大型の解体包丁を下げている。
高級ダンジョン料理店《LAMP》で働いていたが、担当は料理人ではなく「仕入れ」。本部による一括調達で自由な仕入れができなくなると知ると、その場で退職し、自ら迷宮内に食堂を開く。
欲しい食材が深い階層にいるから探索技術を覚え、肉を傷つけず仕留めるため戦闘技術を磨き、鮮度を守るため保存魔法を学んだ。その結果A級まで上がったが、本人にとっては包丁を研ぐのと同程度のことでしかない。
朔崎が興味を持つのは「うまい食材」だけではない。脂が薄ければなぜ薄いのか、肉が硬ければ何を食べ、どこで育ったのかを知りたがる。同じ魔物が季節、場所、餌、獲り方によって変わること自体を楽しんでいる。「店で出すならうまい方がいい」が、まずい個体にも仕入れとしての価値がある。
その価値観のズレがギャグとなり、同時に誰も見ていなかった魔物の生態を見抜く事件解決能力になる。超深層の正体不明生物すら「食えるなら、きっとうまく仕入れるやり方もある」と考える、底なしの仕入れヲタである。
・セラ――「旦那様」を溺愛する、可愛くて底知れない迷宮の魔女
迷宮内部の古い石造家屋で暮らしていた謎の女性。長い髪、目の下の隈、フード姿の陰気な雰囲気を持つが、素顔は美しい。自分について尋ねられると「魔女です」とだけ答える。
長年、何を食べても吐いてしまう呪いを受けていたが、なぜか朔崎の料理だけは食べられた。それをきっかけに朔崎へ惚れ込み、「一緒に店をやらないか」という誘いをプロポーズと解釈。「旦那様」と呼んで当然のように妻の立場へ収まろうとする。
一方、その能力は現代の常識から完全に外れている。食材の時間を停止し、巨大な石造家屋を浮遊させ、次元転移まで使う。迷宮の未知の魔法陣や正体不明の超深層にも心当たりがあり、巨大な不定形生命体へ人間には理解できない言葉を発すると、その動きを止める。
しかし問いただしても、「呪われているので話せません」と当然のように答える。「旦那様♡」と浮かれるコメディヒロインと、迷宮の根幹に関わるらしい不気味な存在という二面性で読者を引っ張る。
・雨宮凛――クソ真面目なS級探索者が、朔崎の価値観に巻き込まれていく
若くしてS級へ昇格した女性探索者。規則、手順、機密管理を重んじる実務家で、黒瀬の強権運営には「ガバナンス」を叫ぶ。
周囲が規格外ばかりのため驚き役になるが、本人の実力は本物。黒雷牛三十頭が放電寸前になった際には、原因となったサイクロプスを一撃で両断する。
しかし朔崎は、討伐ではなく黒雷牛の生態を見抜くことで危機そのものを解決する。雨宮はその視点をS級として学ぶべきものだと認め、次第に仕入れへ興味を持ち始める。最終的にはS級剣術《清流の如し》を謎肉の薄切りに使うまで朔崎の世界へ巻き込まれる。
常識人かつ有能だからこそ異常な三人に囲まれると最もおかしな目に遭う、戦闘力、ツッコミ、主人公への外部評価を兼ねるキャラクターである。
■物語のアイデアと、それが生む面白さ
本作の中核は、「魔物を倒して料理する」のではなく、「食材としてどう仕入れるかによって、魔物の見え方そのものが変わる」ことである。
一般の探索者が危険度や討伐ランクを見るのに対し、朔崎は餌、季節、生息地、脂肪、捕獲時の傷、血抜き、死後変化まで見る。
一つの事件では、以下の三段階の読者価値を作る。
①一般の探索者には「討伐すべき問題」としか見えない状況を提示する
②朔崎だけが食材としての生態や状態から別の解決法を発見する
③解決後には実際に仕入れ、食べることでさらに新しい発見を得る
第4話では、A級相当の黒雷牛三十頭が放電寸前となるが、朔崎は口元についた白い粉から《雷塩》を求めていると見抜く。地面を拳で割って鉱脈を露出させるだけで、殺気立っていた三十頭を鎮めてしまう。この「戦闘力ではなく、仕入れの知識が最適解になる」構造を本作独自の主人公無双とする。
また、各話の食材は単純に高ランク化させない。低階層のありふれた魔物でも、旬、餌、生息地、雌雄、成熟度、捕獲法によって別のテーマを作り、戦闘力だけに頼らず連載を継続できる。
その一方で、食材を追うほど迷宮の未知にも近づいていく。第5話では超深層から持ち帰った正体不明の肉を食べるが、全員一致で「まずい」。それでも朔崎は「食えるなら、きっとうまく仕入れるやり方もある」と喜ぶ。
世界の謎を解くことではなく、最高の仕入れをしたいという主人公の欲望そのものが、物語を迷宮の奥へ進ませる。
■舞台設定・能力ルール
現代日本には巨大な迷宮が存在し、探索者制度、ランク制度、探索配信、搬出検査、物流、ギルドなどが社会インフラとして整備されている。魔物も肉、素材、魔核などの産業資源として流通する。
朔崎はA級探索者だが、ランクには興味がない。食材を獲るために必要な技能を身につけた結果としてA級になっている。
食材の品質は魔物の種類だけでなく、生息階層、餌、季節、年齢、捕獲時の傷、血抜き、保存方法などで変化する。この多数の変数を読み、狙った状態で持ち帰ることが朔崎の「仕入れ」である。
セラの時間停止魔法《リロ・パリア・セクト》は食材の時間を止め、死後変化や劣化を防ぐ。ただし迷宮外では効果が切れる。そのため朔崎は迷宮内部に店を開く。
セラは時間停止以外にも、建物を丸ごと浮遊させる魔法や次元転移など、現代魔法では説明不能な術を使う。
また通常の探索者制度では認識されていない領域が存在する。第4~5話で事故的に到達するが、通常ルートは不明で簡単には再訪できない。早期に世界の底を見せつつ、攻略済みの場所にはしない。
■第1巻・全5話のあらすじ
高級ダンジョン料理店《LAMP》の仕入れ係・朔崎直矢は、本部による食材の一括調達で自由な仕入れができなくなると知り、その場で退職する。
迷宮で希少部位を試食していた朔崎は、食べ物を口にできない謎の魔女・セラと出会う。なぜか朔崎の料理だけは食べられたセラは彼へ惚れ込み、食材の時間を止める魔法を披露。朔崎は「君の魔法があれば、最高の仕入れができる」と誘い、彼女の石造家屋を改装して《迷宮食堂さくざき》を開店する。セラはこれをプロポーズと受け取り、朔崎を「旦那様」と呼び始める。
最初の客として現れたボロボロの老人・黒瀬玄一郎は、A級上位指定《白炎鳥》の料理を食べ、朔崎の仕入れ技術とセラの時間停止魔法に驚く。老人の正体は元S級探索者にして現ギルド総長。黒瀬は翌日の年次迷宮報告会を勝手に食堂へ移し、「白炎鳥をあと二羽準備しとけ」と注文。朔崎は当然のように「わかりました」と答える。
報告会には若きS級探索者・雨宮凛が参加する。規則、機密、営業許可を重んじる雨宮は、黒瀬の強権運営、迷宮内店舗、セラの規格外魔法、朔崎の異常な身体能力へ次々と驚く。
会議では、十九階を三十頭の《黒雷牛》が塞ぎ、二十階以深への物流が止まっている問題が議題となる。黒瀬はその場で自分、雨宮、朔崎、セラを討伐チームに指定し、四人は十九階へ向かう。
現地では、黒雷牛を捕食しようとサイクロプスが接近。雨宮は一撃で両断するが、今度は自分が黒雷牛から最大の脅威と認識される。朔崎は《雷塩》を求めている生態を見抜き、岩盤を砕いて鉱脈を露出。三十頭の危機を戦わず解決する。
雨宮は、自分にない視点だと認め、朔崎から仕入れを学び始める。だが雷塩の地下には未知の魔法陣が眠っており、三人と黒雷牛一頭は正体不明の空間へ転送される。
そこには、巨大すぎて一個体なのかすら分からない不定形生命体が存在していた。セラだけは帰還経路を知り、謎の言葉によって巨大生物の動きを止める。
雨宮が脱出を急ぐ一方、朔崎は「肉が落ちてるんで」と正体不明生物の肉片を持ち帰る。食堂へ戻った雨宮はセラを問い詰めるが、「呪われているので話せません」と返され、さらに追及しようとすると黒瀬と朔崎から無神経な人物のように扱われる。
その後、超深層の肉を調理する。通常の包丁では切れず、雨宮がS級剣術《清流の如し》で薄切りにするが、味は全員一致で「まずい」。
それでも朔崎は笑う。
「食えはするんですよ」
「だから、きっとうまく仕入れるやり方もある」
何一つわからない未知の食材だからこそ、「こんなに仕入れ甲斐のある食材、初めてだな」と再訪を望む。
その直後、食堂の扉が勢いよく開く。現れたのは、見るからに身分の高そうな男。
「ここか……! 黒瀬玄一郎ォ……!」
第3話で黒瀬に煽られた遠方の報告会参加者が、本当に食堂まで乗り込んできたところで第1巻を終える。
■各話のヤマとヒキ
第1話
ヤマ:仕入れを奪われた朔崎が即退職。食べられない魔女・セラと出会い、時間停止魔法を「最高の仕入れができる」と評価して迷宮内に食堂を開く
ヒキ:開店した食堂へ、血まみれでボロボロの謎の老人が入り「飯をよこせ」
第2話
ヤマ:A級上位指定・白炎鳥を最高の状態で仕留める朔崎と、死後硬化すら止めるセラの時間停止によって、黒瀬がその仕入れ能力を認める
ヒキ:老人の正体がギルド総長・黒瀬と判明。翌日の年次迷宮報告会を勝手に店へ移す
第3話
ヤマ:クソ真面目なS級・雨宮が、朔崎、セラ、黒瀬の規格外ぶりへ次々と驚き、朔崎の仕入れ能力が改めて外部評価される
ヒキ:十九階の黒雷牛問題を聞いた朔崎が店を閉めて仕入れへ。黒瀬が即席チームを編成し、雨宮の「ガバナーンス!」を置き去りに出発する
第4話
ヤマ:雨宮がサイクロプスを一撃で両断する一方、朔崎は黒雷牛の生態を見抜き、《雷塩》によって三十頭の危機を戦わず解決。雨宮もその価値観を認める
ヒキ:雷塩の地下の魔法陣が起動し、朔崎たちが正体不明の空間へ転送される
第5話
ヤマ:超深層から正体不明の肉を持ち帰り、食べるが全員一致で「まずい」。それでも朔崎が「きっとうまく仕入れる方法がある」と長期目標を得る
ヒキ:第3話で黒瀬に煽られた遠方の会議参加者が、本当に《迷宮食堂さくざき》へ乗り込んでくる
■サブキャラクター
黒瀬玄一郎
六十歳前後の元S級探索者で、現在は探索者ギルドの総長。退屈な会議を嫌い、食事を優先する豪放な老人。
朔崎の仕入れ能力を早期に見抜き、本人に代わってその異常さを上位探索者や組織へ示す外部評価者。組織運営は雑だが、危機では元S級としての格を見せる。「権力を持った常連客」として、食堂と世界の大きな問題を接続していく。
水野
朔崎が勤めていた高級店《LAMP》の若い料理人。朔崎が仕入れた食材の特徴を読み、調理法を変えて料理へ仕上げる優秀な料理人。
「料理はお前の仕事だろ。俺は仕入れだからな」という朔崎の台詞を引き出し、主人公が料理人ではなく仕入れ係であることを明確にする。旧店側の視点や、純粋な料理人と朔崎の違いを描く際に再登場する。
三木
20代前半の若手ギルド職員。教科書的な探索者知識と常識を持つため、朔崎の行動へ最も素直に驚く一般視点のキャラクター。
前例のない迷宮内店舗を「移動式店舗」として処理し、《迷宮食堂さくざき》の営業手続きを通した張本人。ギルド制度や探索者社会を読者へ見せる役割を担う。
■連載展開
《迷宮食堂さくざき》を物語のホームとし、「客や社会から持ち込まれる問題」と「朔崎が自分から追う食材」を交互に展開する。
食堂には探索者、ギルド幹部、研究者、物流関係者、料理人、配信者、権力者など様々な人物が訪れる。彼らが「危険な魔物」「物流障害」「討伐対象」として見るものを、朔崎だけが食材として別角度から見る。本人は仕入れをしているだけなのに、結果として迷宮の問題まで解決してしまう。
各話では高ランク魔物だけでなく、低階層のありふれた魔物も扱う。旬、餌、生息地、成熟度、捕獲法、血抜き、死後変化など条件を変えることで、同じ魔物でも別のエピソードを作る。
日常では、朔崎を「旦那様」と呼ぶセラとの夫婦未満ラブコメ、常連として好き勝手する黒瀬、常識を守ろうとして毎回巻き込まれる雨宮を中心に、食堂へ人間関係が蓄積していく。
長期の縦軸では、迷宮内部に残る未知の施設とセラの正体を追う。雷塩の地下にあった転移陣、正体不明の空間、巨大な不定形生命体、そしてそれらを知っているセラ。本人は呪いによって説明できないため、各地の施設や魔物の反応から少しずつ過去を逆算していく。
その縦軸を動かすのも朔崎の仕入れ欲である。世界の謎を解くためではなく、未知の食材をもっと良い状態で仕入れるために迷宮の奥へ進む。その結果として、セラの過去と迷宮そのものの秘密へ到達していく。