あらすじ
人間の世界と異界を隔てる「境界」。
そこには、人の目には見えない怪異が蠢いている。
怪異を見つけ、裁き、封じる役目を担ってきた祝巫《はふり》の一族は、かつて人間の欲望によって滅ぼされた。
ただ一人生き残った末娘――藤真しのぶ。
彼女は一族最後の祝巫として、たった一人で境界を守り続けている。
ある夜、しのぶは公園に残された猫の首から、異様なケガレの気配を感じ取る。
死者の怨念が怪異へと変じた「怨念猫」。
怪異を討つことは、しのぶにとって日常だった。
だが、彼女の前に現れるのは怨念だけではない。
人の欲望から生まれた怪異。境界の向こうから流れ着いた妖。そして、ケガレに蝕まれた廃稲荷社に棲みつく謎の黒い天狐――縁。
一方、環境省特務0課副隊長・西崎宗次郎もまた、異形を討つ者として現場に立っていた。
孤独を宿命として背負うしのぶと、寡黙で不器用な宗次郎。
二人は幾度となく共闘するうち、言葉にしなくても互いの動きを理解できるほど、不思議なほど息の合う関係になっていく。
けれど、しのぶが守る「境界」の奥には、一族が滅ぼされた過去と、彼女自身の運命に繋がる秘密が眠っていた。
怪異と向き合うたび、しのぶは自分が背負ってきた孤独と向き合うことになる。
そして、かつては「一人で生きるしかない」と思っていた彼女の前に、最後まで共に生きることを望む男が現れる。
人と異界。
生と死。
憎しみと赦し。
さまざまな境界の狭間で、最後の祝巫が選ぶものとは――。
これは、孤独を宿命として受け入れていた一人の女が、怪異と向き合いながら、自らの生きる意味と、大切な誰かと生きていく未来を見つけていく物語。