あらすじ
中学三年生の佐伯陽向にとって、毎朝六時に母が作ってくれる弁当は、当たり前の日常だった。
少し甘すぎる卵焼き。
たまに焦げたおかず。
「傘持った?」「水筒忘れないでね」
そんな、どこにでもある親子の会話。
陽向は母親を嫌っているわけではない。
ただ、毎日そばにいるからこそ、その存在の大きさを考えたことがなかった。
ある朝、陽向は何気なく言ってしまう。
「もう、弁当作らなくていいよ」
その翌日から、本当に弁当はなくなった。
そして同時に、陽向は母親の日常が少しずつ変わっていることに気づいていく。
母親が抱えていた秘密。
何年もの間、毎朝五時に起きて作られていた弁当。
何気ない一言に込められていた想い。
失って初めて気づく、当たり前の日々の大切さ。
これは、特別ではない親子が過ごした、特別ではない毎日の物語。
そして――
「また明日」と言えることが、どれほど幸せなことなのかを描く物語。