あらすじ
原作では、本編が始まる前に死ぬ。
しかもその死をきっかけに、父は領地から目をそらし、悪政と破滅が加速する。
中堅物流会社で在庫と配送を管理していた佐伯直人が転生したのは、そんな悪役貴族の跡取りコンラートだった。
彼が望むのは、英雄になることではない。ただ死にたくないだけだ。
しかし生き残るには、数字の合わない帳簿、放置された水路、父の借金、十八年後に勇者が悪王を倒した翌日から崩壊する国まで、すべて立て直さなければならない。
彼の魂から生まれたのは、条件を満たすたび力を開く二十二枚のアルカナ。その札を宿すのは、同じ肉体に押し込まれた天邪鬼クロムだった。
クロムにとってコンラートは、得るはずだった肉体を先に奪った相手だ。悪魔を名乗るクロムはコンラートを恨み、アルカナを何より嫌っている。だが札を完全に反転できるのも、彼だけだ。
《愚者》の鑑定と収納、剣と魔法、DLCで知った破滅の記録を武器に、コンラートは破綻寸前の領地を立て直す。アルカナが一枚ずつ開くたびに強さと地位を増し、名もない男爵家の跡取りから、王国を動かす人物へ成り上がっていく。
やがて彼の前に現れるのは、同じゲームの本編序盤だけを知る転生勇者リーゼ。死んだはずの悪役貴族の跡取りを、原作以上に危険な敵だと疑う少女だった。
二十二枚の札は、やがて子や孫へ一枚ずつ継がれる。だが《愚者》だけは、コンラートが死んでも魂を手放さない。
死にたくない転生者と、アルカナ嫌いの悪魔。二人の生存戦略が、領地、国、家族、そして五百年後へ続いていく長編年代記。