あらすじ
よく燃えた蝋燭からは名を消され、煤を吐いた品にだけ名を戻される。家族工房で二度も責任を押しつけられた精製師シネイドは、三度目の苦情先である宿屋へ呼び出された。
完成札を信じて弁償を求める宿屋の主人レンナルトに、彼女が提案したのは十二本の燃焼比較。「一本ずつ燃やしましょう」
濡れ衣が晴れたあと、シネイドは補償代わりの処分予定の獣脂を引き取り、新しい蝋燭を作り始める。謝罪一つでは信用しない彼女と、売上にしか興味はないと言いながら商品札の紐を離せない彼。脂を洗い、芯を撚り、燃えた時間を数えるうちに、二人の仕事と距離が少しずつ変わっていく、職人同士の再出発とじれじれ両片思いのお話。