あらすじ
あの日、俺は、あんたの「いってらっしゃい」に答えなかった。
人生で、初めて、あんたに何も言わずに家を出た。それが最後になるなんて、ほんの少しも、一ミリたりとも、想像せずに。
さようならの一言も、書置きも、形見の異能も残さずに消えてしまった『代』を探す家出中の青年――『辰』は来月の家賃のため、怪異や怪人が起こした問題事を解決する『執行官』として働いていた。今日も今日とて労働に勤しもうとした彼に与えられた任務は『透明人間が増える教室』の調査だった。かつて通った小学校へと訪れた辰はそこで、思いがけない拾い物をすることになる。
「お前、ひとり?」
待ち人来たらず。その人の名前を呼ぶことすら、痛くてできずにいる、かつて『ひとりぼっち』だった青年と、誰のことも信じず、誰にも信じられず、誰のことも頼れない『ひとりぼっち』の少女の人生が、誰かの瞳みたいな満月の下で交差する。自分よりもずっと幼い少女と過ごす、慣れない日々が続く中で、辰は代が消えた『本当の理由』を知って――?
俺はあの日、あんたの手を取ってよかったのか、その答えを、ずっと求めてる。