あらすじ
天才科学者・氷室壮一は、人類を戦争、貧困、病、資源争奪の連鎖から解き放つため、世界を根底から作り変えようとしていた。彼はパンデミックによる世界の危機を、万能特効薬〈ロータスシード〉で救い出す。〈世界の救世主〉と呼ばれた彼の科学技術は、国家のあり方を変える。エネルギー、食糧、医療、資源、軍事、通信、そして人類の進化そのもの。氷室の構想は、やがて日本を、世界を、旧来の秩序を、根本から変えていく。
だが、新しい世界は、ただ美しい理想として訪れるわけではない。世界を揺るがす通天閣での惨劇。家族を通天閣で失い復讐に燃える政治家、神門透馬。イスラエルを憎むパレスチナのスナイパー、レイラ・ファーレズ。憎悪と復讐の炎に身を投じ、世界そのものへ牙を剥く男、張死炎。氷室と神門を追う二人の対照的なジャーナリスト、白井七瀬と宇治川燈子。やがて世界の行く末に大きな影響を与えることになる二人の少女、蓮と祈流。そして日本を救うために父も母も持たずに生まれた子どもたち。
彼らは誰も、単なる善人でも悪人でもない。それぞれが、自分の信じる正義、自分の守るべきもの、自分の抱えた孤独に従って進んでいく。
氷室が目指したものは、人類の救済なのか。それとも、人類そのものの再設計なのか。新しい科学は、飢えを消し、病を癒し、戦争を終わらせるかもしれない。しかし、その力が人間の誕生の意味まで変えてしまうとき、世界はもはや元の姿ではいられない。
「蓮種」は、近未来の日本と世界を舞台に、生命、国家、戦争、科学技術、家族、そして人類の未来を描く長篇SFです。
現在公開する本作は、応募用改稿前の現行版です。冗長な説明や重複部分は整理しつつも、現行版が持つ巨大なクロニクルとしての熱量、思想、構造はできる限りそのまま残しています。
世界を救おうとした男は、何を生み出し、何を変えてしまったのか。そして、その世界に生まれた子どもたちは、どこへ向かうのか。
どうか最後まで、彼らの戦いを見届けてください。