あらすじ
「君は研究者としてだけでなく、伯爵家へ嫁ぐ人間としても失格だ」
魔導具研究者として働くリリア・エーデルは、婚約者のエドガー・ルークスから、“研究成果発表会”の場で突然の婚約破棄を告げられた。
「婚約の解消については、異論はございません」
ただ一つ、彼女が気にしたのは――自分たちの私情によって、研究者たちが努力してきた発表の場を台無しにしてしまうことだった。
その姿を見ていたのが、第一王子エーヴァルト・アインベルク。
「冷徹王子」と呼ばれる彼は、リリアの研究者としての姿勢と、彼女が発表した魔導具に目を留める。
「君は、誰のために研究をしている?」
「この国に暮らす人たちのためです」
魔石からエネルギーを引き出す魔術回路。
その魔力変換効率を計算する能力において、リリアは王国でも並外れた才能を持っていた。
けれど彼女自身は、その才能を特別なものだと思っていない。
ただ、誰かの暮らしが少しでも楽になる魔導具を作りたい。
その思いだけで、ひたすら研究を続けてきた。
「リリア・エーデル研究員を、王立魔導技術研究院へ異動させる」
「なお、今後の研究は私が直接後援する」
婚約者から「必要ない」と切り捨てられた、その直後。
リリアは王国最高峰の研究機関と、第一王子という思いがけない後ろ盾を手に入れることになった。
こうして始まった、王子直属の研究者としての新生活。
誰もが軍事研究を重視する中、リリアは「生活を豊かにすることも国を支える力になる」という信念を胸に、次々と新しい魔導具を生み出していく。
やがて彼女の研究は王都から地方へ広がり、人々の暮らしを少しずつ変えていった。
「君の研究は私が守る」
冷徹王子と呼ばれるエーヴァルトは、研究者としてのリリアを誰よりも尊重しながら、いつしか彼女自身にも惹かれていく。
けれど、二人ともまだ知らない。
それがいつしか、ただの信頼や尊敬ではなくなっていることを。
捨てられた令嬢が、自分の才能と信念で人生を取り戻す。
誰かに必要とされるためではなく、自分の信じる研究で人々の暮らしを変えていく。
これは、婚約破棄から始まる、天才魔導具研究者の成り上がりシンデレラストーリー。
不器用な王子と研究一筋の令嬢が、少しずつ「好き」という気持ちを知っていく恋の物語。