あらすじ
森と人里の境目に、小さな診療所がある。
そこで働くのは、派手な魔法は苦手だけれど、傷を治し、毒を抜き、妖精の羽まで治療できる魔女リリ。
彼女のもとを訪れる患者は、少し変わっている。
羽を破ってしまった花の妖精。
魔力熱を出した子ども妖精。
眠ったまま起きられない夜の妖精。
火を吐けなくなった小さなドラゴン。
もちろん、妖精たちは人間のお金なんて持っていない。
だから治療費は――
どんぐり。
綺麗な石。
花びら。
ガラス玉。
時には、誰かにとって大切な宝物。
そんな小さな患者たちを診ながら、リリは魔法書の写本をしたり、妖精の手紙を代筆したり、森へ薬草を採りに出かけたりして暮らしていた。
ところが最近、森では少し奇妙なことが起き始める。
色を失う薬草。
消えてしまう妖精の道。
魔力を失った森の生き物たち。
そして、どんぐり泥棒のリスが埋めた一粒の実から、不思議な銀色の木が芽を出して――。
これは大きな国を救う英雄の物語ではない。
困っている妖精を一人治して。
迷子を一人、家へ帰して。
弱った森を、ほんの少し元気にする。
森の小さな診療所で紡がれる、妖精と魔女のほのぼのコージーファンタジー。
本日のお会計も、どんぐりで大丈夫です。