あらすじ
世界最強と称される冒険者クラン――《暁の星》。
その頂点に立つクランマスター、トラスには誰にも知られていない秘密があった。
彼は正体と名前を隠し、冒険者ギルドではDランク冒険者として活動しているのだ。
しかも、彼が受ける依頼はいつも一つ。
「薬草採取をお願いします」
高ランク冒険者たちが高報酬の魔物討伐へ向かう中、薬草採取を続けるトラスは、周囲からいつしかこう呼ばれるようになっていた。
「草むしりのトラス」
「いつまでそんな依頼をやってるんだ?」
「薬草採取なんて新人の仕事だろ」
「討伐に行けないくらい弱いんじゃないか?」
そんな陰口を叩かれても、トラスは気にしない。
なぜなら彼には、薬草採取を続けなければならない理由があった。
彼のクランでは、採取した薬草から傷や魔力を回復させるポーションを製造している。
そして近年、報酬の低い薬草採取をする冒険者が減少し、ポーションの材料が不足し始めていた。
だからこそ――。
「誰も採らないなら、俺が採ればいい」
世界最強の男は今日も森へ向かう。
しかし、そんな彼の正体を知らない冒険者たちはまだ気づいていない。
彼らが「草むしり」と馬鹿にしている男こそが、世界最強クランを率いる伝説のクランマスターだということを。
やがて薬草不足の裏で暗躍する魔族の存在が明らかになり、トラスは仲間たちと共に戦うことになる。
そして戦いの中、ついに彼の正体が明らかになってしまい――。
「……え? 草むしりのトラスが、《暁の星》のマスター?」
世界最強なのに、今日も薬草を採る。
これは、誰よりも強く、誰よりも薬草を大切にする男の物語。