あらすじ
「死にとうない――」
慶応元年五月。
処刑を目前にした岡田以蔵は、暗い牢の中で震えていた。
後世に「幕末四大人斬り」の一人として名を残す男。
数々の天誅に手を染め、恐れられた暗殺者。
だが、本当に岡田以蔵は、血を好む冷酷な人斬りだったのだろうか。
土佐の最下層に近い身分に生まれ、理不尽な身分差別の中で育った以蔵。
そんな彼を一人の人間として認め、剣を教え、志を与えてくれた師・武市半平太。
「この人のためなら、命を懸けてもえい」
その純粋な想いは、やがて以蔵を「天誅」という血塗られた道へ導いてゆく。
国を救うため、非情になろうとした武市。
武市を守るため、人を斬り続けた以蔵。
互いを想っていたはずの師弟は、いつしか取り返しのつかないほどすれ違ってしまう。
そして二人の間には、もう一人の男がいた。
坂本龍馬。
身分も藩も敵味方も越え、人を信じ、誰もが笑って暮らせる国を夢見た男だった。
佐幕か、倒幕か。
忠義か、友情か。
正義か、罪か。
誰かにとっての正義は、誰かにとっての悪になる。
それでも彼らは、私利私欲ではなく、それぞれが信じる大切なものを守るため、命を懸けた。
史実を軸に描く、岡田以蔵・武市半平太・坂本龍馬。
三人の志と友情、すれ違い、そして受け継がれてゆく想いの物語。
人は何のために刀を抜くのか。
忠義とは何か。
正義とは何か。
そして、本当の優しさとは何なのか。
これは「人斬り」と呼ばれた一人の青年が、
最期まで人間であろうとした物語である。