あらすじ
地方にある築四十年の格安一軒家を借りた夫妻。
真夏の七月、妻が和室の押し入れを整理していたとき、奥のベニヤ板の一部だけが冷凍室のように異常に冷えていることに気づく。
「ただの断熱材の痛みだろう」と気にも留めず、その冷たい壁の前に冬物を重ねて仕舞い込んだ夫。
しかしその夜から、暗闇の中で布が擦れる奇妙な音が響き始める。
毎朝確認すると、畳んだはずの冬物が少しずつ手前に向かって押し出されていた。
やがて聞こえてきたのは、冷気とともに隙間から漏れ出る「まだ、寒い」という囁き声。
意を決して壁を剥がした夫妻が目にしたのは、図面には存在しない密室空間と、氷のように冷え切った小さな子ども用の浴衣だった…