あらすじ
相次ぐ自然災害により、地球の荒廃は進み、人類は安全な土地を求めて移住を繰り返していた。やがて人々は地球に見切りをつけ、火星へ移り住むことを選ぶ。
安全地帯A地区に建つ一軒家の「私」は、最後の住民である四人家族を見送ることになった。
家そのものにAIが搭載された現代で、家々は互いに会話を交わしながら、自らを置き去りにして宇宙へ旅立っていた人類を静かに見上げていた。
ある日、A地区に残っていた最後の木造の家が、雷に打たれて炎上する。最期まで家としての風格を失わなかったその姿に、「私」は強く胸を打たれる。
住民がいなくなったとしても、いつか至る終焉の日まで自分は家であり続けたい。
そう願った「私」の中では、越してきたばかりの小鳥の一家が、新しい住処を前に胸を高鳴らせていた。