あらすじ
法的には、事故物件ではない。
東京の旧高級住宅街に建つ、敷地百二十坪の邸宅。
元建築家の御厨征一郎が半年前に書斎で病死し、
姪の佐和子が相続した。
高額な相続税と維持費を負担できない佐和子は、
邸宅の早期売却を望んでいた。
ところが、内覧予定が決まるたびに
不可解な事故が起こる。
「叔父が、この家を売るなと
言っているのかもしれません」
相談を受けたのは、
宅地建物取引士でありながら探偵業も営む、
久世間総一郎。
久世間は間取りより先に、住人の靴と玄関の傷を見る。
同行するリフォーム業者・荒金辰五郎は、人の顔ではなく、壁や柱や床板に残された異常を読む。
亡き征一郎は、なぜ土地の分割売却を拒み続けたのか。
遺言書に残された奇妙な一文は、何を意味するのか。
そして、内覧を妨げているのは本当に死者なのか。
家は何も語らない。
だが、人が暮らした痕跡は、嘘をつかない。
不動産仲介人兼探偵と、口の悪いリフォーム職人が、家に残された事情を読み解く職業ミステリー。