あらすじ
入学三日目、教室を間違えてノックしたドアの向こうにいたのは、成績優秀・容姿端麗、先生たちも一目置く生徒会長——月城凛先輩だった。
完璧な人だ、と思った。
でも、次に生徒会室を訪ねた日、先輩は蛾一匹で椅子の上に固まっていた。耳を赤くして「言わないでください」と言った。
差し入れのマフィンをふた口目で幸せそうに頬張るところ。まっすぐ褒めたら真っ赤になって黙りこむところ。ぜんぶ口実だとバレバレの「手伝ってほしいことが」。休日のカフェで、口の端に生クリームをつけたまま本を読んでいる横顔。くまのぬいぐるみを抱いて、机で寝落ちしているところ。
——そのぜんぶを知っているのは、たぶん、わたしだけで。
「先輩の秘密、集めてるんで」なんて軽口を叩きながら、わたしは、自分の胸のざわめきの名前に、まだ気づいていなかった。
完璧な先輩のほころびを、後輩がひとつずつ見つけていく、ゆっくり甘い百合の短編連載。