あらすじ

平安末期。平家の嫡男・高良は、笙の音がきっかけで源氏の嫡男・篁と出会う。二人は和歌と笙を通じて心を通わせ、幼い師弟から無二の友へ、そしてやがて互いを唯一とする間柄へと変わっていった。 だが清盛の死により、平家は賊軍とされてしまう。高良は篁から託された子馬とともに、都を落ち延びていく。 六年後、戦場で再会した高良と篁は、再び共に生きることを選ぶ。それは、愛しているからこそ死ねず、男として生きたいと願いながらも許されない――そんな生を背負う選択でもあった。 平家の落人として追われる身の高良は、女の姿を装い、人の世から隠れて暮らす。平家の家人の息子たちを守りながらの逃亡生活。生き別れた弟たちを探す高良の側には、常に篁と、二頭の愛馬、そして和歌と笙が寄り添っていた。 けれど、義経追捕の命が下った京都で、篁は高良をひっそりと京へ戻し、自分は吉野へと向かう。唯一の者との別れは、平家の滅亡に絶望していた高良の心を静かにむしばんでいった。 男でありながら女として生き、父母すら滅ぼされながら一人生き続け、平家の男でありながら源氏の男を愛し、平家にとって敵ともいえる義経の遺児を守り育てる――そうした矛盾と罪を抱えながらも、高良は平家の武将としての苛烈さを失わない。そして、生き続ける道を選ぶ。 平安末期から鎌倉の世へ。戦乱を生き抜き、失われた命を弔い、愛した者と共に年を重ねていく中で、貴族としての和歌と笙は生涯二人の側にあり続け、高良はやがて、自らの生をようやく肯定できるようになっていく。 これは、滅びの時代を越え、最後には確かな安らぎへと辿り着く、一人の公達の物語である。 ―――― 本作は、男同士の関係性を扱っていますが、それ自体を描くことが目的ではありません。戦乱の時代に生き残った者が、何を背負い、何を選び、どう生きたのか。高良という一人の人間の生を、最後まで見届けていただければ幸いです。

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カクヨム
カクヨム2026/08/31
  • 現在の作品鹿の音のみ ーかのね のみー