あらすじ
熊本の郊外で、警察官の久世は一人の男に職務質問を行った。
自転車の防犯登録を確認し、身分証の提示を求める。
いつもなら、それだけで終わるはずだった。
しかし男は、免許証を裏返したまま問いかける。
「これは義務ですか?」
「あなたが本当に警察官だと、私はどう確認すればいいんですか?」
そして男は110番した。
警察官であることを確認するために。
その夜を境に、久世の周囲で小さな違和感が積み重なり始める。
なぜ、自分はこの仕事を選んだのか。
なぜ、理由もなく相容れない人間がいるのか。
なぜ、自分で選んだはずの人生には、これほど多くの「おすすめ」があったのか。
人間は合理性を求めながら、非合理に生きる。
AIはそんな人間を支援するため、社会のあらゆる場所へ浸透してきた。
少なくとも、人間はそう思っていた。
これは、世界を救う特別な二人の物語ではない。
膨大な人間の中の、たった一つの観測例。
n=1から始まる物語。