あらすじ
「普通に、静かに生きたい」
そんな願いを胸に、私立光陽学園へ入学した櫻坂幸。
人の視線が苦手で、誰かと深く関わることを避けてきた幸は、高校でも目立たず、平穏な毎日を送るつもりだった。
しかし入学初日。
音楽室から聞こえてきたパッヘルベルの『カノン』に導かれるように、幸は五年ぶりに幼馴染の小鳥遊由美と再会する。
さらに、同じクラスになった由美の妹・小鳥遊優。
近寄りがたい雰囲気を持つ少女・帝暁。
そして、暁とは長い間すれ違い続けている双子の妹・帝雪。
彼女たちとの出会いによって、誰とも深く関わらないはずだった幸の日常は、少しずつ変わり始めていく。
それぞれが抱えているのは、他人には簡単に話せない過去と傷。
幸自身もまた、五年前の出来事をきっかけに大きな罪悪感を抱え、人の視線や過去の記憶に苦しみ続けていた。
一方、暁と雪の間にも、二年半前に起きたある事件によって深い亀裂が残されている。
大切な妹を守ろうとした暁。
姉に助けられながらも、恐怖と混乱の中で取り返しのつかない言葉を口にしてしまった雪。
互いを嫌っているわけではない。
それでも、一度傷ついた心は簡単には元に戻らない。
「助けたかった」
「謝りたい」
「ありがとうって言いたい」
「でも、怖い」
言えなかった言葉。
届かなかった想い。
忘れられない記憶。
そして幸もまた、彼女たちと関わる中で、自分自身がずっと目を逸らしてきた過去と向き合うことになる。
誰かを救うことはできるのか。
傷ついた関係は、本当にやり直せるのか。
そして、“普通の日常”とは一体何なのか。
これは、過去に傷ついた少年少女たちが、
互いの痛みに触れながら、少しずつ誰かを信じ、
もう一度前を向こうとしていく物語。
あの町で生きていた僕たちは、
失ったものを抱えたまま、
それでも今日を生きていく。