あらすじ
誰もが知る昔話『三枚の御札』。力ある札を作ることが出来、山姥を涼しい顔で食らう『和尚』とは、一体何者なのか。
物語の主役は、和尚がまだ和尚と呼ばれる前。一人の小僧だった頃。名は良寛、十六歳。抜きん出た力を持つ護符を作り、村人から「札小僧さん」と慕われていた。
ある日、師匠である和尚に呼ばれた良寛は、二つ隣の村で暴れる妖の討伐を命じられる。かつて両親を喰い殺され、蔵の中で一人震えていた自分を救ってくれたのが、今の師匠だった。あの日から積んできた修行の証を示す時が来たのだと、良寛は迷いなく山へ向かう。
村では、両親を目の前で失った少女・お梅と出会う。無力さに泣き崩れる彼女の姿に、かつての自分自身を重ねる良寛。
だが翌朝、山中で相対した妖の血の匂いを嗅いだ瞬間、良寛は悟る。姿形は違えど、これはかつて自分の両親を喰らった、あの化け物と同じ魂を持つ存在なのだと。
命を絶っても消えぬ輪廻の理を前に、良寛は決断を迫られる。この場で滅ぼしきれぬのならば、己の内にその魂を封じ、時をかけて食い尽くすしかない――。
これは、優しき護符使いが、血に塗れた業を背負い、後の『三枚のお札の和尚』に至るまでの、まだ語られていない物語。