あらすじ

目が覚めると、私は記憶も身分証もなく、豪奢な客船の甲板にいた。 船は狂ったような猛スピードで進み、サロンでは正装した人々が優雅にシャンパンを傾けている。 だが、この船には操舵室もなければ、船長も存在しない。 不審に思った私が気づいたのは、世界の恐るべき歪みだった。 引き波は天に向かって反り返り、水平線は垂直の壁となって迫る。 船は前進しているのではない。あまりに巨大な地球の湾曲に沿って、底知れぬ深海へと「自由落下」しているのだ。 「だから何だと言うの? 私たちは生まれた瞬間から、虚無に向かって落ち続けているわ」 狂気を見つめることを拒み、日常という麻薬に溺れる乗客たち。 やがて訪れる世界の臨界点と、漆黒の深淵。 すべてが崩壊する垂直の落下のなかで、男が最後に掴み取った、圧倒的な「自由」の実存とは――。 破滅と救済の短編小説。

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カクヨム
カクヨム2026/08/31
  • 現在の作品自由への逃避行