あらすじ
ダンジョンが出現して四十八年。
戦闘向きの能力を持たない御影灰人は、死亡した探索者の遺体や装備を回収する《特種回収士》として働いている。
彼に与えられたのは、最低等級の生活技能《洗浄》。
だが灰人が、死者が長く使った遺品を本来の姿まで洗い上げたとき、その品に残された最後の声が聞こえる。死者の同意を得られれば、その人物が人生をかけて身につけた技術を、日付が変わるまで借りることもできた。
ただし、身体は灰人自身のまま。
達人の技を使えば、骨が折れ、神経が焼ける。
死者の感情に呑まれれば、自分が誰なのかさえ失う。
ある日、灰人は行方不明になった青年の遺品を回収するため、安全化されたダンジョンへ入る。
そこで見つけたのは、公式記録と食い違う死者の証言。
――相馬は下だ。返事をした。生きてる。
直後、死亡判定された青年から現在進行形の救助信号が届く。図面に存在しない地下へ向かった灰人は、取り残された人気配信者を救うため、ついに死者の剣技を使ってしまう。
その一撃は、配信を通じて世界中に目撃された。
しかもそれは、五年前に全滅したはずの第一世代探索者部隊だけが使えた技だった。
死者を帰すだけだった男は、やがて遺品に残る声を手がかりに、消された事故とダンジョンの真相を追うことになる。
これは、英雄になりたいわけではない遺品整理士が、死者から借りた一夜限りの技で、生者を連れて帰る物語。