あらすじ

町外れの廃バス停の脇に、誰も存在を知らない自動販売機がある。 昼間はただの自販機だ。缶コーヒーもミルクティーも買える。だが深夜零時ちょうど、右下のサンプル枠が切り替わり、そこに「願」という一文字の商品が並ぶ。価格は、0円。 引越会社のコールセンターで働く芦沢湊は、冗談のつもりでそれを買った。  ――あした、しごとにいきたくなくなるくらいしあわせなことがおきますように 翌朝、勤め先のビルが全焼した。全社員自宅待機。願いは、確かに叶っていた。 やがて湊は、その自販機を使う者たちと出会う。死んだ母親にもう一度会いたいと願った女子高生。金持ちになりたいと願った男。好きな人と付き合いたいと願ったコンビニ店員。 願いはすべて叶っている。ただし、必ず本人が想像していなかった形で。 そして誰も、自分が何を代償に支払ったのかを知らない。 洗面所に、使っていない歯ブラシが一本ある。食器棚に、使っていない茶碗が一つある。三年間、捨てられなかった。理由を考えたことは、一度もなかった。

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カクヨム2026/08/31
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