あらすじ
「そんなつもりじゃなかったんだ」
婚約者ユリウスは、何か問題を起こすたびにそう言った。
女性を助け、そのお礼のお茶に付き合ってデートへ遅刻した時も
私との約束を後回しにした時も
彼に悪意がないことは分かっていた
だから私は何度も許した。
いつか、私が傷ついていることを分かってくれると信じていたから・・・
けれど、アルヴェイン伯爵家の夜会で出会った令嬢の首元に、私は見覚えのある銀のペンダントを見つける。
それは、亡き母が自らの声を残してくれた私にとって何より大切な形見だった。
「なぜ、それを?」
そう尋ねた私に、令嬢は不思議そうに答える。
「これは……ユリウス様が下さったのです」
私に断りもなく持ち出されたペンダント。
そして返されたそれは、外見こそ無事だったものの――もう二度と、母の声を聞かせてはくれなかった。
それでもユリウスは言う。
「そんなつもりじゃなかったんだ!」
ええ、きっと本当にそんなつもりではなかったのでしょう。
ですが何度許しても、あなたは変わりませんでしたね。
これは、優しさを履き違えた婚約者を何度も許してきた伯爵令嬢が、最後に彼を見限るまでのお話