あらすじ
領営鋳造所の帳面を預かる令嬢ヴァシリキは、若き鋳物師キリアンに朝粥を取り上げられ、炉番娘サフタへ渡されてしまう。さらに夜番から帰され、大鐘を鋳る夜には「座っていてください」と三度目の戦力外通告。技能でも女としてもサフタに負けた――そう思いながらも、ヴァシリキは恋敵らしき彼女と力を合わせ、乾きの甘い西の湯口へ立ち向かう。銅七十八、錫二十二。三人で鋳造を乗り切った八日後、サフタの一言で、奪われた粥と三度の拒絶はまるで違う顔を見せ始める。ところがキリアンの求婚は、粥の肉を誰が何切れ取ったかという言い争いに転がって――。木椀一つぶん噛み合わない二人と、偽の恋敵が食卓を笑いに変える、両片思いのすれ違い話。