あらすじ
魔道具の不正を見抜くのが、監察官ユーディット・レーマンの仕事だ。
王都最大の商会が扱う魔道具の異常を報告した彼女は、その直後、「栄転」の名目で東部辺境ゲルステへ飛ばされてしまう。
そこで待っていたのは、規格外の武具を使い、無登録の護符を首から下げる警備隊だった。
しかも隊長ヴァルター・アーレンスは、違反を隠そうともしない。
「これを作ったのは、あなたですね?」
「趣味でね」
どう見ても違法。
押収対象。
監察官として見過ごせるはずがない。
――なのに。
粗末な木枠、安物の魔石、不格好な銀線。
そんな違法品を分解したユーディットは気づいてしまう。
この護符は、効率も見栄えも何もかも捨てて、
ただ一つ「絶対に発動すること」だけを考えて作られている。
そして備品庫には、使われることのない完璧な「正規品」が眠っていた。
なぜ、隊長は正規品を使わせないのか。
なぜ、辺境の結界は三年間も放置されているのか。
そしてなぜ、王都から届く報告書には「異常なし」と記されているのか。
規則こそが人を守ると信じてきた監察官と、
十年間、規則を破ってでも人を守ってきた隊長。
二人が一枚の護符から辿り着くのは、
辺境の町だけでは終わらない、不正の痕跡だった。
これは、剣を抜かない隊長と、書類と検査道具を武器にする監察官が、「正しい」とは何かを問いながら戦う物語。