あらすじ
卒業式の日、相原蒼の名前だけが呼ばれなかった。
卒業生名簿に名前はなく、卒業証書も用意されていない。
クラスメイトは蒼の声に気づかず、その身体をすり抜けていく。
昨日まで確かに同じ教室で過ごしていたはずなのに、卒業式が進むほど、写真や出席記録からも蒼の存在が消えていた。
そんな蒼を覚えていたのは、三年間一緒に学校の七不思議を探してきた黒川栞だけ。
緑ヶ丘高校には、七不思議なのに六つしか語られていない怪談がある。
誰もいない音楽室で鳴る卒業行進曲。
肖像画から消える生徒。
場所が変わる十三段目。
名前を呼ぶ人体模型。
存在しない教室を映す鏡。
本を棚へ戻す透明な図書委員。
では、誰にも覚えてもらえない七つ目とは何なのか。
卒業式が終われば、蒼は完全に消える。
残された時間は、あと二時間。
蒼と栞は七不思議を巡り、自分たちが忘れてしまった三年間の約束と、蒼がこの学校に存在する本当の理由を探し始める。
これは、卒業できない誰かを送り出してきた七不思議が、たった一人の少女へ「行ってらっしゃい」を伝え、自分自身も卒業するまでの物語。